きみと同じ歳のころ

いつも眠たい人が書いた文章置き場

鋭角

去年の暮れから指輪をはめている。はめているのは右手の薬指と左手の小指だ。この指を選んだのには意味はないが、ひかりに反射してひかっているのを見ると「これはいいぞ」と思う。
もともと私はアクセサリーに興味はなく、もちろんピアス穴もあけていない。飾りがついたイアリングをすれば「耳元でしゃらしゃら音がするのがうるさい」、ネックレスをすれば「首が苦しい」(なお、会社のセキュリティカードも同じ理由で首から提げていない。カード部分を首から提げる紐でぐるぐる巻きにしてポケットにしまっている)など、とにかく私の体と相性が悪い。そんななのになぜ指輪をはめようと思ったのか。単純にそろそろ年齢に合ったおしゃれをしてみたくなったのだ。さっそく矛盾している。

以前親友に教えてもらったサイトで見つけた指輪を「これいいと思うんだけど」と親友にメッセージを送ったら「それ私もしてる」と返ってきたので笑いながら驚いた。昔から指輪をしているのは見ていたが、まさか同じものだったとは(ちなみに何種類かの色展開もあるので完璧なお揃いではない。と思う)。

後日、予定を合わせて親友と広尾にある実店舗に行って(行ったときに気づいたのだが、ものすごく昔に親友と行ったことがあった店だった)、早速お目当ての指輪をはめる。指の号数なんて生まれてこの方気にしたことがなかったのでアナログな方法ではめては外しをくり返した。そして選んだ。最初はひとつだけ買うつもりだったのでひとつだけ買ったのだが、買ったあとにどうしてももうひとつほしくなってしまい追加で買った。親友も同じことをしていて面白かった(親友は別のアクセサリーを買っていた)。

店はこじんまりとしていてすごく静かで厳かで緊張する。こういう店に行くのはいまだに慣れない。
指輪を買ってからごはん屋に行ってお互いに買った指輪をにまにましながらはめた。不思議な時間だった。窮屈なのは嫌だったのでそれなりにフィットするものを買ったのだが、そのときの指が本調子ではなかったようで、気づけば右の薬指にはめた指輪がゆるくなっていた。関節に引っかかずに、するりと簡単に外せてしまうのだ。日常生活では困ることはないが、ライブで動くと汗や振動やらで外れそうになるので割と焦る。そういうときは右の人差し指にはめ替えたりしているのだがそれはそれで落ち着かない。わがままだなあ。

話は変わるが、結婚指輪をしているバンドマンが好きだ。超信用できる。この人には家庭があって、安心して帰れる場所があるんだなあと勝手に想像して泣きたくなるくらいには好きだ。バンドマンと結婚したいとは思わないが、単純に自分(バンドマン)がその人(彼女)のことが好きで、その人(彼女)も自分(バンドマン)を好きでいてくれる人としあわせな結婚していてほしいと思う。我々は祝いたいのだ。フロアからご祝儀を投げたいのだ(とりあえず三万円でいいですか?)。やっぱりわがままだなあ。もちろん理由があって結婚したことを報告しないバンドマンがいることも知っている。それはそれでいい。わけがあると思うので。

ずっと気になっているのだけど、男性の結婚指輪ってなんであんなに太いんですか? たまにナットかなってレベルに太い指輪をつけている人を見る。私から見たらあまりかっこよく見えないのだが、きっと男性には男性の指輪事情があるのだろう。例えば、己の強さを指輪の太さで表しているとか。